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足のシビレ(足根管症候群)Tarsal Tunnel Syndrome  2010/03/15(月)
巻き爪・陥入爪  2010/02/20(土)
へバーデン結節(Heberden 結節)(Heberden's node)  2010/01/26(火)
運動器症候群:ロコモティブ シンドローム(locomotive syndrome)  2009/11/30(月)


足のシビレ(足根管症候群)Tarsal Tunnel Syndrome

 中高齢者で特に女性で、「足の裏にモチ(餅がひっついているよう」、「ザラザラ砂を踏んでいるよう」、「足裏がピリピリ、ガサガサ、ヒリヒリする」これらはすべて(99%)、考えて頂いて正解だと考えます。

診断のポイントとキーワードは、足の裏が中心のシビレ(足底)であることが重要な点です。足底側であることは手のひら(手掌)と同様に知覚密度の高いのでより敏感にシビレ感を前述のように感じます。

そこで、患者は「足趾もシビレます」「足全体がシビレます」といいます。<足根管症候群の知覚障害部位(図1)>
その通り足底神経は、後脛骨神経が分岐して内側と外側の足底神経と踵骨枝に分かれます。なんと踵までシビレて当然であります。また、足趾IP、DIP以遠は足底神経支配であり患者の言う通りなのです。手の正中神経、尺骨神経が指先の爪の周囲まで掌側より支配されているのと同様に趾先すべて足根管での圧迫(Entrapment Neuropathy)で話が合っていて、患者の言っている
通りなのです。<足根管のシェーマ・後脛骨神経の走行と足底神経(図2)>

ここまでの話で足のシビレを訴える患者の多くが足根管症候群であることが予想できます。

次に補助診断のポイントについて解説します。

1)足根管周囲のチネル徴候。
足根管部(脛骨内果の後脛骨動脈にそって前下方、(足底足先側)屈筋支帯にチネル徴候があり、高支打時に足底又は足趾への放散痛(この時、特にシビレている部位に放散痛があれば、さらに確定的です)があります。

2)外反扁平足、外反母趾を合併していることが多い。
これは足の土ふまずがなくなり偏平化する(足の縦アーチが低下)ことで足根管が狭くなり、神経の通る管が圧排されます。つまり、距骨の内反屈曲(足の外反偏平)により、踵骨も外反して載距突起が内下方に傾くことで足根管内をより狭くしています。
ゆえに、治療法として外反偏平足を伴う足根管症候群には足挿板は有効です。

3)足趾が槌趾変形(Claw toe)になっていることが多い。
このことは、尺骨神経麻痺時、手掌内筋(骨間筋虫様筋なぞ)が麻痺して鷲手になるのと同様に、足底の足底内筋(Intrinsic Muscle)が同様に麻痺するために、Claw toeになると考えると納得できます。

4)糖尿病、関節リウマチ、慢性腎不全(血液透析)などの合併症としての足根管症候群。
手根管症候群、同様に、アミロイド沈着や、近傍腱の浮腫によって、2次的に足根管の狭窄が生じる。頻度も手根管症候群と同様ぐらいの頻度で合併してくると考えています。

5)浮腫の足におこる。
骨折なぞ外傷をはじめとする血流障害や内科的疾患、浮腫性疾患、心不全、腎障害、肝障害、低蛋白血症などによる浮腫での狭窄でおこる空間占拠(Space Occupying Lesion)によることも考えられます。

6)空間占拠(Space Occupying Lesion)によって足根管の狭窄をきたす疾患。
原因には、ガングリオン、神経鞘腫、血管腫などの腫瘍、先天性距踵骨癒合症など明らかな空間占拠障害(Space Occupying Lesion)可逆的な空間占拠としては、次のようなことが考えられます。
骨折による変形、圧迫による外傷性の維持化、静脈瘤の拡大、長趾屈筋腱などの腱鞘炎(付近の腱が外傷後遅発性に腱鞘炎を起こすことによる)短母趾外転筋の副筋腹の肥大などがある。

7)神経伝道速度(MCV)の遅延
正常では45〜52m/秒であります。40〜45m/秒ではやや低下していて軽度障害と考えられます。
40 m/秒以下では重度の障害があり、DMなどの他臓器合併を考えることです。


鑑別診断
1)足底腱鞘炎
・腱鞘炎であるために主に疼痛が主訴でありシビレはない。
・運動時痛、圧痛が主であり、Paresthesia(違和感、感覚異常)はない。
・圧痛部位が足底踵骨結節の足底腱膜付着部が主である。
・T.T.Sと圧痛部位、刺激の方向が違う。

2)有痛性外脛骨腫
この疾患は運動時痛、体重負荷時に舟状骨結節部(後脛骨筋付着部)に疼痛がある。T.T.Sでは安静時にもシビレがあり、動作時(足関節の動き)で足底への刺激的疼痛、シビレがある。

3)Morton病(モートン病)
T3.4趾間つまりT3外側、T4内側の間のシビレ、疼痛である。
これは、足趾神経の内側枝、外側枝の吻合部での異常であり、発生学的に、そこに神経腫が発生しやすく、第3.4中足骨間の刺激により、疼痛が発現する。
従って、シビレ、疼痛は第3.4趾間であり、第3趾の内側、第4趾の外側にはシビレ、感覚異常はないのである。

4)2ヶ所での障害(Double crash lesion)
糖尿病性神経障害、腰部脊椎間ヘルニアなどは、必ず念頭においた上で鑑別診断すべきである。<足の神経支配(図3)>
しかしながら、他院でMRIでの腰のヘルニアが無いのにもかかわらず「足のシビレの原因がわからない」「腰からのシビレと言われたが、改善しない」という症例では、腓骨神経障害の次に足根管症候群を考えて精査、診断して下さい。


治療法
1)湿布療法:同部への湿布、モーラステープやロキソニンテープ(若年者では靴下をはかない、日光過敏症のことを考えて、ロキソニンテープを選択のこと)など
2)理学療法:TENSなどの低周波治療。
3)神経ブロック:ステロイド局注療法
4)装具療法:足挿板によるアーチサポート効果を期待して外反偏平足による足根管へのストレスを軽減する。
5)手術療法:MRIで同部に圧排、占拠病変(ガングリオンなどがあれば手術の適応となる)。占拠病変がなくても、維持化組織の?扼の可能性が強い場合、また、保存療法、抵抗例には足根管開放術が適応となる。


足根管症候群(T.T.S)とヒトの足の余話
足底は、舌、手、の次に敏感で緻密な感覚野ですが、足は人類の歴史(進化)からみれば、退化しつつある器官である。しかし足底についた餅や砂、落葉などのついた感覚。これは人類の古い記憶の賜であり、その発現型なのでなります。なぜ、経験したことがないのに、そのように表現するのでしょうか?
ヒトの足は手ほどに高度に発展、進化を遂げていません。
足はチンパンジーあたりをピークに退化していったと考えられます。
ゆえに足底の原始的感覚、アフリカの人類発生地から、ユーラシア大陸へと向って大地の足底の感覚が残っていて、それが草や砂、泥沼、落ち葉の感覚だったのです。
現代人の脳では、このDNAに組こまれた足底の感覚が高次機能で解釈されて出した答えが患者の言う「餅、砂のへばりついた感覚」と言う訴えになったのです。
(まことに、たかが足のことで進化論まで言及しましたこと、言い過ぎましたこと、反省します。陳謝)

これから人間(ヒト)の足は、どのように進化をとげるのでしょうか?楽しみです。

皆様もよくご存知の通り、第5趾DIP関節消失はよくあることですが(進化の退行現象)、最近の若年者に第4趾のDIP関節が消失している例をよく目にしませんか? これからの進化には少し不安もあります。


鳴嶋クリニック
鳴嶋 眞人

参考文献
・ 図説臨床整形外科講座第8巻「足」 メディカルビュー社 1982年
・ 足のクリニック 井口 傑  南江堂  2004年
・ 糖尿病診療事典 繁田幸男ほか  医学書院  2004年
Date: 2010/03/15(月)


巻き爪・陥入爪
陥入爪(Ingrown Toenail)とは、足の爪の縁が周囲の皮膚に食いこんで痛みや炎症を生じる病気のことで、多くが母趾(足の親ゆび)に発生します。
尚、爪の曲がり方が強く爪全体が半円柱状になって皮膚に食い込んだ場合は、巻き爪と呼ばれます。
幼児から高齢者まで、どの年齢でも発生し、軽症まで含めると全人口の約10%が罹る割合との報告もあります。
【原因】
陥入爪の原因は必ずしも1つではありませんが、生れつきの形態異常の場合もあります。つまり 爪の形が先天的に幅広い方や端が巻いている方がなりやすいです。しかし、多くは外傷や環境など後天的な要素によります。日本・欧米でも靴を履かなかった時代にはなかったことからも、靴による圧迫が大きな原因で、きつく尖った足に合わない窮屈な靴の着用、長時間の歩行やスポーツしている際などに 強く爪が皮膚に刺さることがきっかけで発生し、その後爪は自然に伸びるためにどんどんと皮膚に強く刺さり、進行していくと考えられています。また、爪切りの時に深爪をして脇の皮膚を傷つけてしまうことや、爪を水平に切らずに角を丸くカーブして綺麗に切ってしまうことも原因の1つです。
【症状】
陥入爪の初期は無症状ですが、次第に痛むようになります。特に陥入した部分が圧迫されると痛みは激しくなります。患部が、赤くなり熱感を伴う炎症期から始まり、感染を起こし、その部分が痛み赤く腫れて、膿がたまった水疱ができ、やがて膿が出てくる化膿期へと進みます。さらに、爪の刺激に反応し、赤い肉が盛り上がってくる肉芽期へと進行します。
 多くの患者さんは、痛みの原因である爪を深く切って、痛みを和らげようと試みます。この行為が症状を悪化させます。深爪すること自体が、皮膚を傷つけます。爪の形状は、側縁で固定されることにより保持されているため、そこが切られて遊離した状態が続くと、爪の変形がかえって進行します。また、爪を切った外側に、爪の一部がトゲ状に埋没されて残る場合が多く、それが刺激の原因になります。
尚、夏期になると、感染しやすくなるため、陥入爪に伴う化膿・炎症が非常に多くなりますので、気をつけてください。
【治療法】
 まず、家庭でできる予防法は、つま先に余裕のある靴を心掛けること。ただし、緩すぎるのも、靴の中で足が動くためかえってつま先に負担が掛かることも忘れないで靴選びをなさってください。爪切りの際は、深爪を避けて、長すぎるくらいを心掛けます。清潔の維持、器械的な刺激からの保護が効果的です。
1.爪を伸ばす
深爪が原因の1つなので、爪を切らないで伸ばせばよいのです。 爪の先端が指の外に出るまで根気強く伸ばしてください。 但し、爪のくい込み方がひどい場合、爪の端のトゲ状の部分が伸びるときに指先にひっかかり余計に痛くなるので注意してください。
また、伸びた爪で靴下が破れやすくなることをすみませんが御了承下さい。
2.コットンパッキング
爪の端のくい込んでいるところに綿を詰めていきます。 ポイントは、一度にたくさんの綿を詰めないことです。 理由は、刺激が強くなり痛いですし、無理に綿を詰め込むと、中で爪のトゲ状のものが折れて、皮膚の中に残り痛みが強くなり化膿してくる恐れがあるからです。 少量を毎日少しずつ詰めて行って下さい。 ちょっとずつ爪が持ち上がり、爪が伸びてきたら、ひっかからず、指の外に出ると思われます。
3.テーピング法
コットンパッキングは、爪を持ち上げる方法でしたが、テーピング法は、くい込まれている指の皮膚を、外側もしくは下側に引っ張り、爪と皮膚の間に隙間を開ける方法です。 これはとても簡単な方法で、爪がくい込んでいる皮膚の表面にテーピングテープを貼り、爪との隙間を開ける方向に引っ張り、固定するだけです。
4.手術
症状が進んだ場合は、手術による治療を行います。お医者さんと相談して治療に取り組んでください。
抜爪は、一時的に痛みは改善しますが、再発する場合があります。
爪母爪床切除術とは、爪の陥入部分をその下床(爪床)と爪の付け根(爪母)を含めて広く切除する方法です。切除後は糸で縫合する場合と開放して治癒を待つ場合があります。
切除せず、フェノールなどの薬品により焼灼する方法もあります。これらの方法は、効果的ですが、爪の幅が細くなる欠点があります。
他には、人工爪や矯正による治療も試みられています。人工爪を深爪した爪の上に装着し、爪を長くして、原因を除去するものです。矯正は、変形した爪に樹脂や金属のプレートを接着して行います。形状記憶合金プレートなどをドライヤーで加熱し、プレートが平らに戻ろうとする力で矯正します。矯正に数ヶ月を要し根気のいる治療法なので頑張ってください。ただし矯正できる程度に限界がありますが、爪に変形を与えない点が特長です。
               
                  森川医院 森川 献志漢
Date: 2010/02/20(土)


へバーデン結節(Heberden 結節)(Heberden's node)

へバーデン結節とは、手指の一ばん先にある第一関節(DIP)が赤く腫れたり変形する病気です。長年の使いすぎによる変形性関節症(関節軟骨が磨り減ってその周囲の骨が変形する)の一つです。
最初に1802年報告した英国の医師William Heberden博士の名にちなんで、ヘバーデン(ドイツ語でヘベルデン)結節と呼ばれています。更年期以降の働き者の御婦人によく発生し、10:1の割合で女性に多いものです。また、職人さんにも多く認められます。
大半は両側性に発生しますが、特に人差し指には好発します。
症状としてヘバーデン結節は遠位指節関節(DIP)の自発痛と運動時痛で、慢性期になると屈曲変形し運動制限(関節の曲げ伸ばしが困難な状態)が特徴的になってきます。また関節周囲の骨棘と皮膚軟部組織腫脹により指の第一関節(DIP)の側面を押さえると痛いことがあります。また、嚢胞(mucous cyst)と呼称される、関節背側にゼリー状の内溶液の貯留することもあります。
レントゲン検査では関節裂隙の狭小化(関節軟骨が摩耗し減る状態)や骨棘形成などを認めます。
ヘバーデン結節とリウマチの見分け方としては、全身の中で、指の第一関節(DIP)だけが腫れ変形したりしているときはヘバーデン結節の可能性が高くなります。リウマチでは手首や膝等の大きな関節も腫れることが多く、指の関節が腫れる場合、先から2番目(PIP)か3番目(MP)の関節が強く腫れることが多いです。尚、リウマチでは関節炎があちらこちらに移動するのも特徴です。
ヘバーデン結節の治療法としては、安静が第一ですが、場合により固定をして安静をたもちます。薬物治療としては、痛み止め・腫れを引かせるくすりをのみます。その副作用は胃腸障害・眠気程度です。その他には、注射(局所、神経ブロック、関節内注射)も有効です。尚、理学療法は急性期をすぎてから行い。消炎鎮痛として、レーザ照射などの電気療法も有効です。日常生活の注意点は、冷やさないことで、特に冷水はよくないでしょう。それらで、だめな場合は手術で関節を固定する方法などもありますが、手術は痛みがひどいときに限られますので、特に治療をしなくとも自然と痛みは軽減しますし、通常は変形が進むと痛みがなくなることを念頭に置き手術も考えてください。

                       作成:森川医院 森川献志漢
Date: 2010/01/26(火)


運動器症候群:ロコモティブ シンドローム(locomotive syndrome)

1)定義;ロコモ:「運動器の障害」により「要介護になる」リスクの高い状態になること。
日本整形外科学会が、2007年(平成19年)に、新たに提唱しました。「ロコモ」の提唱には、「人間は運動器に支えられて生きている。運動器の健康には、医学的評価と対策が重要であるということを日々意識してほしい」というメッセージが込められています。
「ロコモ」はより広い概念で、運動器の障害による要介護の状態および、要介護リスクの高い状態を言います。運動器障害は徐々に進行することから、自分で気付くことが重要です。

2)診断;ロコモチェック:ロコモーションチェック:Locomotion Check
これまでの高齢者に関する研究や臨床経験から、例えば「階段を上るのに手すりが必要である、15分くらい続けて歩けない、片足立ちで靴下がはけない、横断歩道を青信号で渡りきれない、家のなかでつまずいたり滑ったりする」場合などが含まれます。 (ロコチェック)

3)治療;ロコトレ:ロコモーショントレーニング:Locomotion Training
ロコモと、ご自身で気付かれたら、今後ロコモが進んで、要介護にならないように、トレーニングをしてください。
方法は、開眼片足立ち、スクワットが有効です。詳しい方法は、お近くの整形外科を受診して、ご相談ください。


                          おので整形外科 斧出安弘
Date: 2009/11/30(月)


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